考えないヒント

さて、私は長らく小林秀雄『考えるヒント』を読まない方向で、意地を張っておりまして、ついに古書店にて購入、凡そ読破に至りました。
小林翁の講演旅行におけるエピソードをはじめ、中年期に至った私に丁度面白い小編が多く、今般私は助かりました。
私がこの短編集を読まなかったのは、友人との喧嘩の成り行き上、私は彼の勧めに反して、読書の楽しみを投げ出したのでした。
おそらく、20年前の大学生の私は、たとえ読んでも、このうちの幾編も楽しく感じなかったでしょう。
たしかに小林翁の文学批評や、他の政治批評、音楽批評に金を投じるべき時代ではなかったと、いま振り返って、私の判断はマアマアだったと思うに至りました。
小白川には新聞連載のような文学批評を薦める大学教官などいないし、自らの著書や論文、そこで引用されている物を読めと言われました。教官に抗う自称大学生は、世界の最先端の何かを求め、味わえば宜しい。
ただ、それだけのことです。