となりのウチナーンチュ
- 作者: 早見裕司
- 出版社/メーカー: 理論社
- 発売日: 2007/12
- メディア: 単行本
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若い女の子たちの友情物語、というほど単純でもなくて、人間と神との関係、親と子の関係、中年男の飲み友達との関係が、微笑ましく描かれている。
蛙の置物の形で彩華と夏海の前に現れた神様。中国土産の神様なのだそうだが、なかなか素晴らしい言葉を下さる。
「…人間が信じることが、神にとっての何よりの捧げ物だ」
(265頁)
神を信じて祈ることが大切である。日ごろから、神を讃えて祈ることが大切だ。
…彩華は、神経科の先生の言葉を思いだしていた。自分の人生にとって必要な人が、必要なときに、実際の人間として現われるーーという話を。
(314頁)
必要な人が自分に与えられる。自分自身も、誰かにとって必要な、愛されるべき人物として、与えられる。
最後の晴れ晴れとした章にて、彩華が想いを巡らしているように、沖縄も秋田や山形も曇りの日が多いようだ。しかし、それでも各県の住人が晴れ晴れと生きて行けるのは、沖縄の神様固有の力によるのではないのだろう。ましてや、中国から来た蛙の神がいつでもどこでも居るのでもない。
本作で作者は、沖縄がNHK朝ドラの夢物語とは異なると言いたいようだが、そのために地域別の神様信仰(沖縄固有の信仰)だけでなくて、蛙の神様も登場させたのだろう。信仰に対する著者の立場がぶれていて、多少もったいない気がした。
加えて、最終章における移動手段のコンプライアンスには、もう少し配慮が欲しかった。
上記の難点さえ我慢すれば、大人のクリスチャンにもなかなか面白く読める一冊だ。もっとも、「大人の事情」を忖度しかねる若いクリスチャンには、おすすめできない。
*1:次女がそっちを探していた。